コラム

リフォーム業者必見!
リフォーム業者に必要な行政手続き

リフォーム業界の市場環境

リフォーム業界の市場規模は国土交通省や民間調査機関の統計でも6兆円以上と言われており、住宅の老朽化や中古住宅の流通増加により、毎年若干の浮き沈みはあるものの堅調な需要を保っている市場といえるものになっています。特に築30年以上の戸建てやマンションは増加傾向にあり、内装・外装の改修、水回り設備の交換などのリフォーム需要は、今後も減少することなく推移することが予測されています。このような背景から、リフォーム業への新規参入や事業拡大を検討する事業者は少なくありません。しかし、表面的には参入障壁が低く見える一方で、実際には各種行政手続きや人材要件が大きな壁となり、許認可の取得・維持が事業運営に直結するのが実情です。

リフォーム業者に必要な行政手続きとは

リフォーム事業を営むうえで避けて通れないのが各種行政手続きや許認可の取得・維持です。リフォーム業者がまず意識しなければならないのが「建設業許可」です。
500万円以上の工事(建築一式工事は1,500万円以上)を請け負う場合は必須となっています。そして許可を取得するには、専任技術者という人材配置要件が大きなハードルとしてあり、内装工事に係る国家資格者が必要になりますが、中小の事業者に建設系国家資格者が在籍しているというケースは少なく、難航が予想されるところです。
また、一言でリフォームと言ってもその内容は幅が広く、その関連でリフォーム業者は多岐にわたる業務を行うことになります。部屋のクリーニング、天井やクロス張替え、バスやキッチンの取付、その他にも外壁の補修や塗装工事を行うこともあるでしょう。そして例えば塗装工事を行う場合には塗装工事の許可、バスやキッチン取付には管工事の許可が必要となるなど、工事種類により取得が必要な建設業許可が異なり、それぞれの工事種類に係る建設系国家資格者の在籍が必要なため、その各国家資格者の確保は容易ではなく、新規雇用で獲得していくには相当の時間がかかってしまうことでしょう。

建設業に関する許可についてのその他のコラムはこちら
新規参入の際に要注意!建設業には多くの許可や登録が必要!

建設業許可に必要な資格者の例(専任技術者)

リフォーム工事の種類によって必要となる資格は異なります。

工事の種類 主なリフォーム内容 求められる資格例
内装仕上工事業 クロス張替え、床材施工、天井仕上げなど 内装仕上げ技能士
建築施工管理技士
建築士
塗装工事業 外壁塗装、防水塗装、屋根塗装など 塗装技能士
建築施工管理技士
管工事業 給排水設備工事、キッチン・浴室設置 管工事施工管理技士
配管技能士
大工工事業 木造住宅の改修、間取り変更 建築大工技能士
建築施工管理技士
建築一式工事業 複合的なリフォーム・リノベーション 建築士
建築施工管理技士

専任技術者とは、適正な請負契約の締結や注文者との見積作成、工事の技術的なやり取りを行う立場にあり、営業所に常駐する者を指します。専任技術者についてもう少し確認井したい方はこちらのコラムも参考にしてください。
専任技術者とは?

リフォーム業の関連する業務と行政手続き

更に、リフォーム業に関連して、下記のような業務を行い事業拡大を行う企業も多く存在し、その可能性は大きいものの、各業務につき行政での許可手続きが必要となっています。

【その他の関連許可例】
・建築士事務所登録:設計などを行う場合は、建築士事務所の登録が必須です。特にリノベーション分野では設計力が強みとなるため、建築士を抱える事務所登録が競争力に直結します。

・宅建業免許:不動産仲介とリノベーションを組み合わせる「ワンストップサービス」を行う場合には宅建業免許が必要です。中古住宅を仕入れてリノベーション後に販売するビジネスモデルでは不可欠な免許といえます。

・産業廃棄物収集運搬業許可:解体やリフォームに伴って発生する建築廃材を処理場まで運ぶには、都道府県ごとの許可が必要です。無許可で運搬した場合は、廃棄物処理法違反で重い罰則を受けるリスクがあるため注意が必要です。

いずれの許可についても国家資格者などの人材要件が存在し、これらをクリアすることが新規参入・事業拡大のカギとなります。

行政手続き上の課題と現実

上述の通り、リフォーム業における行政手続きは、人材確保と組織体制の整備が不可欠です。例えば建設業許可を取得しても、その後5年ごとに更新が必要であり、経営業務管理責任者や専任技術者が退職した場合には許可要件を満たさなくなるリスクもあります。

また、産業廃棄物関連の許可では「車両ごとの許可」「営業エリアごとの許可」が必要で、複数地域で事業を展開する際には煩雑な手続きを踏まなければなりません。行政書士などの専門家に手続きを依頼するケースが多いのも、このような背景があるためです。

M&Aの可能性

リフォーム業は、安定した需要を背景に今後も成長が見込まれる業界ですが、参入や拡大には多くの行政手続きと人材確保が立ちはだかります。特に建設業許可をはじめとする各種許認可は、単に取得するだけでなく、維持管理を含めて長期的に対応していく必要があります。そして、これらの課題を乗り越える有効な手段として、M&Aの活用が現実的な選択肢となりつつあります。近年では、人材不足や後継者不足、業界再編の流れからM&A(企業の合併・買収)を検討するリフォーム業者が増えています。
小規模法人のM&Aも活発化しており、M&Aを通じてアクセスし、新たな地域・商圏を一気に参入することも可能となると同時に、許認可と人材をまとめて調達できる大きな魅力があります。大手リフォーム業者が中小を買収する動きが活発なのも、この点が狙いです。
注意点としてM&Aを検討する際には、頼れる専門家の力をかり、許可や人材の状況を正確に把握し、財務・契約関係を含めた正確なデューデリジェンスを行うことが成功のカギです。自社の成長戦略に悩んでいる経営者にとって、「未来への投資」として積極的に検討すべき選択肢と言えるでしょう。

ライター紹介
道原 信治
道原 信治 氏
行政書士法人Dee 代表行政書士

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