事例

電気工事業界の
M&A事例26選

電気工事業とは

電気工事業とは、一般の住宅やマンション、ビル、工場など、さまざまな建物における電気設備の工事を請け負う業界です。具体的には、ブレーカーの設置や配線、コンセントやスイッチの取り付け、照明器具の設置など、電気工事全般に関わる作業を行います。

電気工事業は、建設業の設備工事業に該当し、一般電気工事業と電気配線工事業の2つに分類されています。一般電気工事業には、送電・配電線工事や各種電気設備工事などが含まれており、電力の供給に関わる重要な役割を果たしています。電気配線工事には、建築物の屋内外の電灯照明や電力の配線工事、会社や住宅などの電灯照明電力機器の配線工事などが含まれています。

現在の電気工事業界の動向

電気工事業界では、経営者の高齢化や後継者不在が深刻な課題となっています。多くの企業が創業者の一代であり、後継者がいないために事業継承が困難になり、廃業してしまうケースも少なくありません。

また電気工事業をはじめとし建設業界は、元請け企業が受注し下請け企業が実際の工事を担当するという形態が主流です。しかし、この元請け・下請け形式にはいくつかの問題があります。まず、元請け企業は工事の利益を抑えるために下請け企業への報酬を削減する傾向があります。その結果、下請け企業の収益が低下し、人手不足や技術者の育成が進まないという問題が発生しています。また、元請け企業にとっては下請け企業の品質管理や納期遵守が課題となります。下請け企業の技術力や力量に左右されることもあり、信頼関係の構築や管理が重要となります。

上記の課題を解決するため、近年電気工事業でのM&Aが増加傾向にあります。後継者不在を課題とする会社はM&Aにて第三者承継することで現場の技術力やノウハウを活かすことができ従業員の雇用を守ることにもつながります。また元請け下請け構造による課題を解決するためにM&Aによる事業拡大や業界内の統合を図るケースもあります。経営資源の集約や経済的な利点を追求することで、元請け・下請け問題の解決に寄与しています。

電気工事業界でM&Aを選択するメリット

電気工事業界でM&Aを選択するメリットは下記のようなものがあります。

人材の確保

電気工事業界は労働集約型の業界であり、有資格者の確保が課題となっています。経験豊富な従業員を継続的に確保するためには、M&Aによる他社の人材の獲得が有効です。M&Aによって規模が拡大し、電気工事業界全体での知名度や求人力も向上することで、優秀な人材の獲得に繋がります。

コア事業の拡大

M&Aによって他社との統合を果たせば、新たな事業や市場に展開する機会が生まれます。例えば、太陽光発電の工事やインターネット回線の設備工事など、電気工事業界の垂直的な拡大が可能です。さらに、M&Aによって技術やノウハウを保有する企業を獲得することで、競合他社との差別化も図ることが可能です。

事業の多角化

電気工事業界は景気に左右されやすい業界です。景気低迷時には建設プロジェクトが減少し、需要が減少するため、業績の低下が懸念されます。しかしながら、M&Aによって事業の多角化を図れば、業績の依存度を下げることができます。例えば、電気通信工事業界やエネルギー関連事業への進出など、異業種への展開によってリスクを分散させることが可能です。

電気工事業界のM&A事例26選

電気工事業界ではどのような形でM&Aが行われているのか事例をあげてご紹介します。

事例1 燦キャピタルマネージメントと高山エンジニアリングのM&A

2023年6月、投資事業、ソリューション事業を行う燦キャピタルマネージメントは、太陽光発電の設備工事などを手がける高山エンジニアリングの株式を取得し、子会社化しました。

燦キャピタルマネージメントは、クリーンエネルギー分野への進出を検討しており、今回の譲受により工事受注に必要な特定建設業許可を取得し早期実現を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取得価額:2,040株(51.0%)・2,040万円(概算額)

事例2 ダイキアクシスとメデアのM&A

2023年2月、水回りの住宅関連商材・浄化槽・産業排水処理などを行うダイキアクシスは、太陽光発電設備等の再生可能エネルギーに関する事業及び電気工事業を展開するメデアの全株式を取得し子会社化しました。

今回の譲受により大口電力需要家からの要望に対してより迅速に対応出来る体制を構築できるとともに、グループの技術力・購買力向上を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取得価額:252株(100%)・非公開

事例3 高島と新エネルギー流通システムのM&A

2022年12月、建材事業、産業資材事業、電子・デバイス事業を展開する高島は太陽光発電システム関連・オール電化システム工事を手がける新エネルギー流通システムの全株式を取得し、子会社化しました。

高島はエネルギーソリューション分野において、工事施工の機能を強化し、さらなる成長を目指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取得価額:200株(100%)・非公開

事例4 北陸電気工事とスカルトのM&A

2022年10月、設備工事業(電気工事、管工事等)を行う北陸電気工事は電気工事業等を運営するスカルトの全株式を取得して子会社化しました。

スカルトを子会社化することにより、北陸電気工事はグループの北陸地域における商圏のさらなる拡大を目指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:60,000株(100%)・非公開

事例5 前澤化成工業と常陽水道工事のM&A

2022年10月、上水道・下水道関連製品の生産・販売等を展開する前澤化成工業は、管工事業、土木・電気工事等を運営する常陽水道工業の株式91.93%を取得し子会社化しました。

前澤化成工業は技術・ノウハウの融合を期待すると共に、両者の得意とする公共事業・民間事業への取り組みを共に進め、事業基盤強化と収益力向上を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:73,545株(91.93%)・非公開

事例6 JESCOホールディングスと阿久澤電機のM&A

2022年9月、総合エンジニアリングサービスを展開するJESCOホールディングスは、電気・電気通信工事業を主軸とする阿久澤電機の全株式を取得して子会社化しました。

前橋・渋川の群馬県央地域のみならず、群馬県全体および近隣県での営業展開の強化を図るとともに、資格保有者との人材交流などのシナジー効果も期待するとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:660,000株(100%)・非公開

事例7 エスラインとクリエイトのM&A

2022年9月、運送事業、倉庫業、情報処理事業等を展開するエスラインは、家電製品の配送・設置工事を行うクリエイトの全株式を取得し子会社化しました。

東北地区における家電配送・設置の業容拡大につなげ、グループ内での経営資源の連携や情報システムの共有など協業化を進めるとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:1,000株(100%)・非公開

事例8 TVEと太陽電業のM&A

2022年1月、各種バルブの製造販売及びメンテナンス、各種鋳鋼製品の製造販売を行うTVEは、電気工事や管工事を手がける太陽電業の株式を取得し、子会社化しました。

今回の譲受により、それぞれが持つノウハウとリソースを連携・協調させることで様々な相乗効果を発揮し、より一層の企業価値向上を⽬指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:56,000株(100%)・非公開

事例9  ETS ホールディングスとユウキ産業のM&A

2021年11月、電力事業、設備事業、海外事業を展開するETSホールディングスは、空調・給排水・電気設備工事や各種点検・メンテナンス・環境測定などを行うユウキ産業の全株式を取得し、子会社化しました。

ETSホールディングスはユウキ産業を傘下に加えることにより、電気工事の一括受注体制の整備と業容拡大を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:20,000株(100%)・非公開

事例10 きんでんとフジクラエンジニアリングのM&A

2021年7月、電気設備、情報通信設備等の事業を展開するきんでんは、電力設備・通信設備の設計から施工までを請け負うフジクラエンジニアリングの全株式を取得し、子会社化しました。

今後成長が期待される再生可能エネルギー関連工事市場や、次世代情報通信関連工事市場において、両社がそれぞれ保有する経営資源の相互の補完・共有・活用を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:2,000株(100%)・非公開

事例11 アウトソーシングテクノロジーとアイテックのM&A

2021年2月、エンジニア派遣事業、システム構築・ソフトウェア開発請負事業などを展開するアウトソーシングテクノロジーが、ビルや商業施設、工場の電気工事・電気通信工事を行うアイテックの全株式を取得し、子会社化しました。

アウトソーシングテクノロジーグループの技術者や教育リソースと、アイテックが持つ顧客基盤のシナジーにより、グループ全体の事業成長に加えて、事業ポートフォリオの更なる拡大を目指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:100株(100%)・非公開

事例12  サコスと親和電気のM&A

2021年2月、機械・機器のレンタル、リース業等を展開するサコスは電気設備工事・プラント工事等を展開する親和電気の全株式を取得し、子会社化しました。

今回の譲受により発電機レンタル事業における新たな需要創造が期待でき、またグループの成長戦略の達成と中長期的な企業価値向上を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:20,300株(100%)・非公開

事例13 オーウイルとメビウスのM&A

2020年12月、食品・飲料原料等の輸出入及び国内販売等を行う複合機能商社のオーウイルはメビウスの電気工事業を吸収分割により譲受しました。

今回の譲受により、オーウイルは電気工事業を内製化し、業務用大型シーリングファンの販売拡大を図るとしています。

譲渡形態:吸収分割

事例14 エムティジェネックスとチヨダMEサービスのM&A

2020年10月、オフィスビルの内装工事、電気設備、空調設備のリニューアル工事等オフィスビルの保全管理業務を展開するエムティジェネックスは、電気設備システムの保守・保全業務を行うチヨダMEサービスの全株式を取得し、子会社化しました。

今回の譲受によりエムティジェネックスは新たな事業への進出と事業エリアの拡大を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:60,000株(100%)・非公開

事例15 東洋テックと明成のM&A

2020年10月、警備事業とビル管理事業を合わせた総合管理サービス事業等を展開する東洋テックは消防用設備や監視カメラの電気工事・点検事業等を行う明成の全株式を取得し子会社化しました。

東洋テックは、明成の電気工事事業のノウハウやリソースを新たに取り込み、活用することにより、グループにおける警備事業及びビル管理事業との一体運営や人的資源を相互に活用していくとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:240株(100%)・非公開

事例16 アヅマテクノスと富士工機のM&A

2020年8月、メーカー・研究機関などに向けて真空産業機器・光学精密測定機器・電子計測器などの販売・施工・修理事業を展開するアヅマテクノスは、長野県を中心に電気機械器具の販売・施工、電気通信工事などの事業を展開する富士工機の全株式を取得し子会社化しました。

両社の強みを生かすことでシナジー効果を発揮し、さらなる成長と事業拡大を目指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

事例17  TOKAIホールディングスと中央電機工事のM&A

2020年8月、LPガス・宅配水事業を主要事業とし他にも建築、設備工事業等を展開するTOKAIホールディングスは電気設備工事業を展開する中央電機工事の全株式を取得し子会社化しました。

今回の譲受により、TOKAIは総合建設事業者として設備工事業における空調・衛生・電気といった主要3工事の受注体制が構築され、中京圏における更なる受注拡大を目指すとしています。一方、中央電機工事はTOKAIがもつハウスメーカーやゼネコンといった取引先からの電気工事の受注拡大が見込めるとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:40,000株(100%)・非公開

事例18 ホクタテとクリシマのM&A

2020年7月、総合ビルメンテナンス業・通信事業・商社事業を展開するホクタテは、電気設備工事業を展開するクリシマの全株式を取得し、子会社化しました。

クリシマをグループに迎えることで、ホクタテの総合ビルメンテナンス事業や通信事業と連携し事業ポートフォリオの強化を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

事例19  オークラサービスと上野電気工業のM&A

2020年3月、物流機器製造大手オークラ輸送機の子会社であるオークラサービスは、電気設備の設計施工等を行う上野電気工業の全株式を取得し、子会社化しました。

オークラサービスは上野電気工業の技術力と実績をこれまで以上に活かし、メンテナンス事業や工事事業との相互補完、相乗効果を創出することにより事業基盤を拡大し、企業としての総合力強化を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

事例20 富士古河E&Cと町田電機商会のM&A

2019年7月、プラント・施設・オフィスビルなどを対象とする電気設備工事業、情報通信設備工事業等を展開する富士古河E&Cは長野県を拠点に電気設備工事を中心に事業を展開する町田電機商会の全株式を取得し子会社化しました。

今回の譲受により更なる施工体制の強化および事業拡大に向けた事業基盤の強化を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:40,000株(100%)・非公開

事例21 ミライト・ホールディングスとトーエイ電気通信のM&A

2019年6月、情報通信エンジニアリング事業等を展開するミライト・ホールディングスは、電気通信工事業を展開するトーエイ電気通信と株式交換を行い、同社を子会社化しました。

両社での人材の相互交流や育成等を通じ、更なる施工体制の強化とリソースの有効活用による業務の効率化を図ることでグループとしての収益力、競争力の向上を目指すとしています。

譲渡形態:株式交換
株式交換比率: ミライト1:トーエイ370

事例22 藤井産業とサンユウのM&A

2018年12月、北関東を地盤とする電気機器の専門商社である藤井産業は産業機械の電気設備工事、制御盤・分電盤の設計及び製作を請け負うサンユウの全株式を取得し、子会社化しました。

両社の長年培った経営資源や強みを相互活用することにより、お客様への提案の充実、技術力の向上、取扱商品の拡充、仕入の効率化を図るとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:20株(100%)・非公開

事例23 住友電設と田村電気工事のM&A

2018年12月、ビル・工場の内線工事、電力、プラント・空調工事等を展開する住友電設は茨城県内で架空送電線路の建設・保守・点検等を行う田村電気工事の全株式を取得し、子会社化しました。

住友電設は田村電気工事との連携により茨城県内を中心に施工力増強を図り、引き続き架空送電線業界の労働力確保、品質維持向上を目指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

事例24 エア・ウォーターと丸電三浦電機のM&A

2018年7月、エア・ウォーターグループの地域事業会社でありエネルギー関連のサービスを展開する北海道エア・ウォーターは、札幌地区を中心に電気設備工事、情報通信工事などを展開する丸電三浦電機を子会社化しました。

今回の譲受により、病院設備にかかる総合監視業務をはじめ、これまで以上に広範囲な領域で各種設備工事の受注が可能となるほか、エア・ウォーターグループの幅広い事業展開において相互のシナジー効果が期待できるとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

事例25 鴻池運輸とエヌビーエスのM&A

2018年5月、各種プラント向け機器・設備のエンジニアリングサービス等を展開する鴻池運輸はエンジニアリング事業を展開するエヌビーエスの全株式を取得し、子会社化しました。

今回の譲受によりエンジニアリング事業を強化し、一貫したエンジニアリングサービスの提供を実現し、また両社の融合により新たな海外、国内関連事業、異業種への参入を目指すとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

事例26 九電工とエルゴテックのM&A

2018年3月、九州地方を中心に電気設備工事を展開する九電工は、空調・衛生をはじめとした設備工事会社のエルゴテックの株式を追加取得し子会社化しました。

今回の譲受により両社は将来の成長・発展に向け、保有する経営資源を相互に補完・活用し、シナジーを高めるとしています。

譲渡形態:株式譲渡
取得株式数・取引価額:非公開

まとめ

電気工事業界では、M&Aや会社売却が活発化しています。この業界では後継者不在や人材確保の課題があり、事業継続のためにM&Aが選択されています。会社売却のメリットとしては、事業継続の可能性や新たな成長の機会があります。後継者不在等の自社の問題のみならず、工事高の減少やコロナ禍の影響、建設投資の傾向などの業界の変化に対応するためには、事業拡大の為の経営戦略を検討する必要があるでしょう。

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