コラム

専任技術者とは?

建設業許可の取得をお考えなら、専任技術者の証明が難しいという話は聞いたことがあるかもしれません。専任技術者とは、適正な請負契約の締結や注文者との見積作成、工事の技術的なやり取りを行う立場にあり、営業所に常駐する者を指します。
建設業許可を申請する中で、専任技術者の証明方法は都道府県によっても異なるのですが、その中でも最も厳しいとされる東京都を例としてお話させていただきます。

東京都で専任技術者の申請には国家資格が必要

専任技術者の一番のスムーズな申請方法としては、建設業許可の申請要件に定められた国家資格を有する方が申請会社の役員又は従業員にいらっしゃることです。
個人事業主であれば、事業主本人又は従業員、支配人登記をした支配人が国家資格を有する必要があります。その国家資格とは、建設業許可において取得したい各専門工事に該当する国家資格を有することが必要です。(例えば、内装仕上げ工事であれば建築施工管理技士、管工事であれば管工事施工管理技士など)
国家資格を有する方がいらっしゃれば、申請会社においての在籍を証明するのみで足りるため、専任技術者の証明は比較的スムーズだと言えるでしょう。

国家資格者が社内にいない場合

問題になるのは国家資格を有する方がいらっしゃらない時です。
その場合の専任技術者の証明方法は、基本は10年間の実務経験を持って証明することとなります。これは、建設業許可において取得したい専門工事での実務経験を証明することになります。では具体的にどうやって証明するのかをご説明いたします。

具体的な申請方法

東京都の場合、その専門工事を請け負ったとされる、元請け又は発注者との工事契約書や注文書、又は元請け又は発注者への請求書が求められます。
請求書の場合、通帳の入金明細もあわせて必要です。
請求書については、あとで再作成できてしまい、疑義が生じやすいからだと推察できます。(工事実績書類の再作成は違法です)

専任技術者が国家資格を保持していない場合、この工事契約書、注文書、請求書を10年分提出することが求められています。その10年分とは、各工事契約書の契約日、又は注文書・請求書の発行日付の期間が3か月未満であること、つまり1年に4~5枚×10年分を提出することになります。
(R4年に要件が改訂され、それまでは1月1書類×10年のルールだったのが、緩和されました)
加えて、提出する工事契約書、注文書、請求書の内容について、しっかりと建設業許可において取得したい専門工事の内容が読み取れることが求められます。
仮に、専門工事の内容が読み取ることのできないような場合、別途見積書や工程表、工事完了報告書等の補完書類を提出する必要があります。

よくある難しいケースは?

実務経験を前に勤めていた会社での実務経験で証明する場合

これらの10年の実務経験証明について更に難しくなってくるのが、実務経験を前に勤めていた会社での実務経験で証明する場合です。
膨大な量の工事契約書、注文書、請求書と場合によっては通帳明細を借りてくる必要があるため、かなりのハードルになると言えます。
更に、前に勤めていた会社での実務経験で証明する場合、在籍していたことの証明が必要になります。
その会社が健康保険加入会社であれば、年金加入履歴を年金事務所から取得し証明することができますが、健康保険加入会社でなかった場合はさらに大変です。
役員であった場合は、決算書の中にある役員報酬書類を10年分、従業員であった場合は、住民税特別徴収の実績書類を10年分又は源泉徴収簿全従業員分+決算書の中の従業員給与内訳書類を10年分が必要になります。
(証明方法については例えば、神奈川県申請で言えば源泉徴収票のみで良いなど、各所ローカルルールが見受けられます)

現在の会社においての在籍証明

そして最後に、当該専任技術者の方を申請会社の健康保険に加入させることにより、いわゆる申請会社での常勤性という条件を満たす必要があります。
これは申請会社の名前の入った健康保険証の写しを持って証明が可能です。

すこし細かくなりましたが、これらの条件を満たした上で専任技術者として申請することが可能です。多くの例外ケースがありますので、ご不明な事があれば専門家にご相談することをおすすめします。

ライター紹介
道原 信治
道原 信治 氏
行政書士法人Dee 代表行政書士