コラム

建設業者はどのような書類を保管しておく必要があるのか

建設業者は建設業上の書類保管義務が発生します。その目的は、適正な工事契約・体制の担保や下請け業者の保護などが挙げられます。特に特定建設業許可会社である元請業者については、法に基づいた体制構築が強く義務付けられています。

帳簿の備え付けとは?

国土交通省が提示している資料にも記載のある、帳簿の備え付けとは具体的に何のことでしょうか。建設業法には下記のように示されています。

以下、建設業法から抜粋)
(帳簿の備付け等)
第四十条の三 建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。

建設業者はその営業所ごとに、国土交通省令で定める必要事項を記載した「帳簿」及び「帳簿の内容に係る添付書類」を保存しなければなりません。

その帳簿には主に、下記の事項を記載する必要があります。

・営業所の代表者の情報
・建設工事の請負契約に関する事項
(工事の名称及び工事現場の所在地、請負契約を締結した年月日、注文者の情報、工事の完成の検査完了日、工事目的物の引き渡し年月日など)
・工事の下請契約に関する事項
(下請負人に請け負わせた建設工事の名称及び工事現場の所在地、下請契約を締結した年月日、下請負人の情報、工事の完成の検査完了年月日工事目的物の引き渡し年月日など)

その他細かく記載事項がありますが、この帳簿のExcelのひな形が国土交通省や各地方整備局のHPにありますので、そちらを使用すれば漏れなく帳簿を作成・管理することが可能ですのでご活用ください。

施工体制台帳・施工体系図の作成について

施工体制の的確な把握によって、建設工事全体の適正施工に努める必要があり、建設業法には下記のように示されています。

以下、建設業法から抜粋)
(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)
第二十四条の八 特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた場合において、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるときは、建設工事の適正な施工を確保するため、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事について、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない。

帳簿とともに保管する添付書類については下記の書類が挙げられます。

・施工体制台帳・施工体系図
・工事契約書
・工事完成図
・発注者との打合せ記録
・下請負人に支払った下請代金の額、支払年月日及び支払手段を証明する書類(領収書等)またはその写し

このうち、「施工体制台帳」と「施工体系図」について、特定建設業者が元請業者の立場として、その工事を施工するに際して締結した下請契約の総額が4,500万円(建築一式工事については7,000万円)以上になる場合、作成が義務付けられています。

施工体制台帳については、工事現場ごとに備え付けが義務付けられており、施工体系図については工事現場への掲示が義務付けられています。
また元請業者は、施工体制台帳の作成対象工事であることを工事関係者への周知をしなければならず、下請業者に対し、その下請業者の更に下請業者に工事を請け負わせる場合に「再下請負通知」の提出を求める必要があります。

この「施工体制台帳」「施工体系図」「再下請負通知」についても国土交通省や各地方整備局のHPにサンプルがありますのでそちらを活用すれば記載事項漏れを防ぐことができるでしょう。

書類の保存期間はどのくらい?

上述の書類の保存期間について、帳簿については5年間(発注者と締結した新築住宅を新築する建設工事に係るもの は10年保存)、添付書類については対象となる建設工事の目的物を引き渡してから10年間とされています。しっかりと保存じておくことが重要です。

適正な工事施工体制を!

人々のインフラを担う建設業は日本の発展に欠かせない重要なものです。
工事の規模が大きくなればなるほどその影響は大きく、その運営に法令遵守は欠かせない事項です。
私の運営する行政書士事務所において、新規事業として建設業界に参入される企業様に対し、法に基づいた施工体制・書類保管義務に関わるコンサルティングの機会をいただくこともありますが、これらの制度自体を「知らなかった」と言われることは少なくありません。
しかし、知らなかったでは済まない事もあり、特に昨今において、企業の法令遵守の姿勢は厳しく見られています。

参考資料:国土交通省 関東地方整備局資料(建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和5.1版))

ライター紹介
道原 信治
道原 信治 氏
行政書士法人Dee 代表行政書士