コラム

売却価格・成功事例から徹底解説!
内装工事業のM&A完全ガイド

本記事は、内装工事業のM&Aや事業売却に関心を持つ経営者・オーナーの皆様、特に、後継者不在、人材不足といった業界特有の課題に直面し、M&Aを解決策の一つとして検討されている方、あるいは事業のさらなる成長や拡大を目指し、戦略的なM&Aに関心がある方々にとって、有益な情報を提供することを目指します。

内装工事業界におけるM&Aの注目度が高まる背景

近年、内装工事業界ではM&Aへの注目度が高まっています。その背景には、人材不足や後継者問題の深刻化が挙げられます。多くの企業が廃業の危機に直面する中で、M&Aは事業の存続、従業員の雇用の維持、そして経営資源の有効活用を実現する有効な手段として認識されています。また、M&Aを通じて企業規模の拡大や技術力の強化を図る動きも活発になっています。
人手不足・後継者不在以外にも、下記理由で内装業界のM&Aが注目されています。

  • 建材・施工技術の多様化による”知的資産”の価値化
    内装工事は従来のクロス貼りや床施工だけでなく、環境配慮型建材やデジタル施工技術(BIM連携、レーザー測定など)が急速に普及しました。こうした技術を持つ企業は「施工力」だけでなく「ノウハウ資産」を持つため、M&Aで獲得する価値が高まっています。 特にサステナブル建材や防音・断熱などの専門技術は、単独企業では開発・普及が難しく、統合によるシナジーが期待されます。
  • ゼネコン・不動産業界の”ワンストップ化”思考
    大手ゼネコンや不動産会社は、設計から施工、アフターサービスまでを一括提供する流れを強めています。内装工事会社を取り込むことで、外注管理コストを削減し、品質統一を図ることができます。つまり「下請け」から「バリューチェーンの一部」へと位置づけが変わり、M&Aの対象として注目されやすくなっています。
  • 働き方改革・安全規制強化への対応
    建設業界全体で労働時間規制や安全基準が厳格化しています。小規模内装業者は対応コストが重く、単独では難しい場合が増えていることもM&Aが注目されているひとつの理由です。M&Aによる規模拡大で、労務管理や安全教育を効率化でき、規制対応力そのものが「競争力」となり、買収の動機につながっています。

内装工事業の売却価格の相場・査定のポイントは?

内装工事業M&Aの売却価格相場

M&Aにおける売却価格には、一概に「相場」というものは存在しません。最終的な価格は、売り手と買い手の条件交渉によって合意された金額で決定されます。しかし、適正価格を把握することは交渉をスムーズに進める上で非常に重要です。

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売却価格は、企業規模、地域、事業内容、将来性など様々な要因によって変動します。例えば、都心部に拠点を持ち、安定した顧客基盤を持つ企業や、特定の技術に強みを持つ企業は、より高い評価を得る傾向があります。また、人材不足が深刻な地域では、優秀な人材を抱える企業が高く評価されることもあります。

技術力・許認可・顧客基盤が与える価値への影響

内装工事業におけるM&Aでは、以下の要素が企業価値に大きく影響を与えます。
  • 技術力:特殊な技術やノウハウ、施工管理能力は企業の競争力を高め、買収企業にとっての魅力となります。
  • 許認可:建設業許可や特定の専門工事に関する許認可は、事業継続に不可欠な要素であり、企業価値を向上させます。
  • 顧客基盤:安定した取引実績のある優良な顧客(特に学校、病院、公共施設など再現性の高い工事実績)は、将来的な収益の安定性を示すため、高く評価されます。
  • 人材:若手技術者や有資格者の在籍は、買い手企業の人材不足解消に直結するため、企業価値を大きく高める要因となります。

内装工事業界M&A・事業売却の事例と解説

内装工事業界の最新M&A事例をご紹介しながら、業界のM&Aについて解説します。内装工事業のM&Aについてさらにイメージを深めていただけますと幸いです。

事例1:ZIPS create株式会社と株式会社ワイドレジャーのM&A

リフォーム・リノベーションの設計施工から営繕工事まで幅広く手がけてきたZIPS create株式会社は2025年、株式会社ワイドレジャーへ株式譲渡によるM&Aを実施。
今後、両社は、内装技術とレジャー業の融合による新たな挑戦に取り組んでいく。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :非公開

事例2:清水建設とCross Management社のM&A

清水建設株式会社は2025年2月、グローバル事業の外部成長戦略の一環として、北米地域統括法人「シミズ・アメリカ社」を通じ、米改修・内装工事の米国ニューヨーク州を拠点とする改修・内装工事会社「Cross Management Corp.」の株式51%を取得し、SAI社の子会社としました。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :非公開

事例3:清水建設とGrandwork社のM&A

清水建設株式会社はグローバル事業の外部成長戦略の一環として、シンガポールに本社を置く高級内装工事会社「Grandwork Interior Pte Ltd」の全株式を取得し、子会社化。
Grandwork社は、1996年にシンガポールで創業した内装工事会社で、高級内装工事市場で同国トップクラスのシェアを有す。Grandwork社の子会社化は、新規ビジネスへの参入、ASEANでの事業拡大、グローバル経営人財の獲得を企図したもの。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :非公開

事例4:ジオリーブグループと丸西のM&A

ジオリーブグループ株式会社は株式会社丸西の株式を取得し、連結子会社とした。
東北エリアを中心に商業施設や公共施設等の内装工事を手掛ける丸西をグループに迎え入れ、同エリアにおける事業基盤の強化及びグループとしての非住宅分野への取組強化を図り、さらなる企業価値の向上を目指す。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :34,814株・1,080 百万円

事例5:オカムラとDB&B社のM&A

オカムラはシンガポール子会社でオフィス設計・内装工事のDB&B社を完全子会社化した。
DB&B 社はシンガポールに本拠を置き、中国及びフィリピンにも展開する中堅のオフィス向けデザイン・内装工事会社。これまで手掛けた案件において多くの国際的な賞を受賞する等高い能力を有し、また多くのグローバル企業、現地大手企業を中心とした優良な顧客基盤を有す。今回のM&Aでオカムラは海外事業の強化に繋げることを目的とする。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :2,457,915 株・6,068 百万円

事例6:共栄店舗とケイズプランニングのM&A

西日本を中心に飲食店や物販店など商業施設をはじめ、建築や内外装の工事を手がける
株式会社共栄店舗は2024年1月に、福岡県の内装工事会社である株式会社ケイズプランニングの全株式を取得し、完全子会社化した。
共栄店舗は、アパレルブランドの店舗設計や施工実績が多いケイズプランニングのノウハウを生かし、より幅広い業種のニーズに応えていく方針。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :非公開

例7:サンゲツとD'PerceptionのM&A

株式会社サンゲツは、2024 年 5 月 10 日開催の取締役会において、シンガポールの D’Perception 社、そのグループ会社を合わせて「D’Perception 社グループ」)の過半数の株式を取得した。
今回の買収により、空間デザイン・総合施工に強みを持つ D’Perception 社グループとインテリア商品の開発・取り扱い・施工に強みを持つサンゲツグループとの協業を進めることで、東南アジアの市場・顧客のニーズに応じた総合的かつ多様なサービスの提供、並びに、中国、インド等アジア全域を睨んだ事業拡大が可能となる。

譲渡形態 :株式譲渡
取得株式数・取得価額 :4,194,017 株・非公開

内装業界のM&A事例7つをご紹介してきました。
多くの事例が「グループ化・同業間M&A」という形で、同業でさらなる規模の拡大を目指すM&Aであると言えます。
事例1のような「異業種のM&A」も増えてきており、異業種だからこその事業展開による更なる成長を目指すM&Aの方法もあります。

傾向として2つに分けて紹介しましたが、M&Aの形は企業ごとに様々です。自社がどのように発展していきたいのか、売却して終わりではなくその後を考えたM&Aができると満足度の高いものにできるのではないでしょうか。

準備と注意点~失敗しないためにできること

ポイント1:事前に整理すべき経営・財務状況

M&Aを成功させるためには、事前の準備が非常に重要です。売り手企業は、自社の経営・財務状況を正確に整理しておく必要があります。
  • M&Aの目的を明確化:後継者問題の解決、事業の成長、創業者利益の確保など、M&Aを行う目的を明確にしましょう。
  • 自社の強みと課題の把握:技術力、顧客基盤、人材、特許、ブランド力など、自社の魅力となる点を洗い出すとともに、簿外債務などの潜在的なリスクも正確に把握します。
  • 企業価値評価の試算:M&A仲介会社などの専門家と協力し、自社の適正な売却価格を試算します。

ポイント2:従業員雇用・案件引継ぎなどの実務面

M&A後の実務面での円滑な移行も、成功の鍵となります。
  • 従業員の雇用維持:従業員の雇用契約は、M&Aの手法によって継続の有無が変わります。株式譲渡であれば雇用は原則継続されますが、事業譲渡の場合は買い手との再契約が必要です。従業員の雇用条件やキャリアパスについて、M&A後に不安を与えないよう、適切なタイミングで丁寧な説明を行うことが重要です。
  • 案件の引継ぎ:進行中の工事案件や顧客との契約をスムーズに引き継ぐための計画を立てます。主要顧客には、M&A後もサービス水準が変わらないことを共同で説明するなどの配慮が必要です。
  • 許認可の確認:建設業許可など、事業遂行に必要な許認可がM&A後も維持されるかを確認します。

ポイント3:信頼できるM&A仲介会社・アドバイザーの選び方

M&Aでは法務、税務、会計などの専門知識が不可欠であり、専門家のサポートが成功を左右します。
  • 実績と専門性:自社の業界や規模に特化した実績を持つ仲介会社を選びましょう。内装工事業界のM&Aに精通したアドバイザーであれば、業界特有の事情を踏まえた提案が期待できます。
  • 報酬体系:相談料、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬など、M&A仲介会社によって料金体系が異なります。M&Aが成立しなかった場合の費用負担も含め、事前に詳細を確認しましょう。完全成功報酬制を採用している会社もあります。
  • 担当者との相性:M&Aのプロセスは長期にわたるため、信頼でき、相性の良い担当者を見つけることが重要です。無料相談などを利用して、直接話してみることをおすすめします。
  • ネットワークの広さ:豊富な買い手候補や売り手候補のデータベースを持つ会社は、最適な相手を見つけやすいでしょう。

今後の業界トレンドとM&A・事業売却の可能性

内装工事業界は、今後も以下のようなトレンドの中でM&Aの可能性を広げていくと考えられます。
  • リフォーム・リノベーション需要の増加:新築住宅着工数の減少が続く一方で、既存住宅のリフォーム・リノベーション需要は増加傾向にあります。これは、持続可能な資源の活用やバリアフリー化の需要拡大が背景にあります。
  • DX・IT化の推進:建設業界全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)やIT化の推進が求められており、BIM(Building Information Modeling)などの新技術導入による生産性向上が期待されます。IT技術を持つ企業とのM&Aも今後増加する可能性があります。
  • 環境意識の高まり:省エネ化や環境配慮型建築への需要が高まる中で、関連技術を持つ内装工事会社はM&A市場で高い評価を受けるでしょう。
これらのトレンドに対応し、競争力を強化していく上で、M&Aは内装工事業の経営者にとって重要な戦略的選択肢となるでしょう。

まとめ

本記事では、内装工事業におけるM&Aの現状から成功のためのポイントまでを解説しました。人材不足や後継者不在が深刻化する中で、M&Aは事業承継や事業拡大、競争力強化の有効な手段として注目されています。M&Aを成功させるには、目的の明確化、自社の正確な評価、信頼できる専門家の選定、そしてPMIまでを見据えた周到な準備が不可欠です。
内装工事業界の経営者の皆様にとって、M&Aは新たな未来を切り開く強力な選択肢となり得ます。後継者問題の解決、優秀な人材の確保、事業の成長、そして従業員の雇用の維持といった多岐にわたる課題をM&Aを通じて解決し、会社を次のステージへと導くことができるでしょう。M&Aは「ご縁」とも言われます。この機会にぜひ、信頼できる専門家にご相談いただき、貴社の最適な未来を実現するための一歩を踏み出してください。



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ライター紹介
三樹 貴成
三樹 貴成
ブティックス株式会社 部長
入社1年で10件の成約を達成し、2022年にはグループ長代理へ昇格。2024年、部長就任。新領域のM&Aチームを担当、マネジメントする。